『らでぃっしゅぼーや』は、有機野菜の宅配サービスです。カタログやネットを見ながら注文をします。
カタログには、低農薬や無農薬の野菜が“これでもか”と載っている。1品からでも注文はできます。なかでも人気があるのが「パレット」という野菜の詰め合わせです。
「パレット」の詰め合わせは、中身は『らでぃっしゅぼーや』にお任せで、選ぶことができません!では、なぜ人気があるのか?
有機栽培で作った「華トマト」
「華クイン」は、山梨にある農業生産法人『サラダボウル』で作られています。生産者の小俣さんは、“らでぃっしゅぼーや”に「華クイン」を卸して10年になります。
甘さと酸味のバランスが良くて食べると甘くてジュースのような味のトマトです。普通のトマトより実がたくさん付くから、常に間引きが必要です。栽培には手間がかかるトマトなんです。
有機栽培とは、化学肥料を使わない農法です。トマトの肥料となるのは、米ぬかともみ殻などを発酵させて使っています。農薬に関しては、無農薬か最低限の農薬にすることがらでぃっしゅぼーやのルールです。
農産部のスタッフは25人が農家を回って品質のチェックをします。「華クイン」の担当スタッフは、農家生まれの杉山さんです。野菜に関してはスペシャリストなんです。
毎年どうしたら手間がかからなず病気がでずらいか、受精が落ちないか、そういう栽培がどれかという話をする・・・杉山さん・・・
パレットの1枚の紙が安心を与える
収穫した野菜は、全国5ヶ所にある配送センターに送られます。パレットの箱には、野菜の他に1枚の紙が入ります。そこには、農薬を使ったかどうかと生産者の名前と住所が載っています。
野菜宅配サービスの大手で、ここまでやっているのは“らでぃっしゅぼーや”だけなんです。野菜は農家を出てから、36時間以内に利用者に届けられます。
らでぃっしゅぼーやは、契約している農家が全国に2600軒あります。
プレッシャーがいいものを作る
千葉県山武市にある『さんぶ野菜ネットワーク』も、“らでぃっしゅぼーや”の契約農家です。生産者の富谷さんは、名前や住所が載ってしまうことを“プレッシャー”と言います。
プレッシャーが「いいものを作ろう」という努力につながるんじゃないかな・・・富谷さん・・・
利用者からの手紙が届きました。“私の中ではナンバーワンの野菜です”“緑の野菜をよける子供もたくさん食べていました”
消費者さんから直接の反応をもらうのは皆無だったので、「おいしい」という一言に勝るものはない・・・富谷さん・・・
会員数16万人 有機野菜の宅配ではトップ
『らでぃっしゅぼーや』は、会員数16万人と有機野菜の宅配サービスの中ではトップなんです。らでぃっしゅぼーやの社長は、国枝俊成さんです。
“独自性”を生かして伸びていけば、おのずと安心・安全がより日本に広がっていくのではないかと思っています。
国枝さんのいう独自性とは?
一部の地方で栽培してきた“伝統野菜”は、その地域だけで見慣れない物が多い。らでぃっしゅぼーやは、日本全国の伝統野菜を「いと愛づらし(いとめづらし)」シリーズとして販売している。
たとえば、札幌の大きなキャベツ“札幌大球”は、8kgもあるキャベツです。幻となった“亀戸大根”など100種類も登録されているんです。
らでぃっしゅぼーや農産部の潮田和也さんは、年間400軒の農家を回って珍しい野菜を発掘しています。
消えかかってきたけれども、実はとてもおいしい!それを説明して届ければ「地方にはこんなおいしい野菜がある」とアピールできると思ったんですね
群馬県の太田市にある『利根川みどりの会』には、契約農家の定方雅彦さんがいます。「大型三東菜(おおがたさんとうさい)」は、白菜の仲間ですが球にならずに夏に収穫します。
この地域では、室町時代から食べられている伝統野菜なんです。メジャーな野菜ではないからスーパーでは扱ってくれません!
こういうものはなくなってしまうのかな、とさみしさを感じていました
らでぃっしゅぼーやの「いと愛づらし」シリーズに選ばれて、1コ230円で販売されました。大人気の商品になりました!
有機野菜宅配会社
有機野菜宅配会社は、らでぃっしゅぼーやの他にオイシックスや大地を守る会などがあります。
らでぃっしゅぼーや:売上高223.0憶円 会員数16.1万人
オイシックス:売上高201.5憶円 会員数11.1万人
大地を守る会:売上高135.7憶円 会員数9.9万人
こだわり野菜の価値は、少しずつ浸透しています。大手3社のなかでもらでぃっしゅぼーやは、トップを走ります!
らでぃっしゅぼーや「農薬に対する考え方」
●人が病気で飲む薬のように「仕方なく」使う
●生産者は、より農薬を減らす努力
●使う場合は報告し、情報を公開
●環境や人体に影響が大きい農薬は使わない(除草剤など)
●地中の微生物が死滅する土壌消毒は禁止
日本の高温多湿の気候風土などを考えると、農薬は使わないに越したことはないが、できるだけ少ないながらも少しだけ使う。
“低農薬”というのは、バランスの取れた考え方だと思う。やむを得ず農薬を使った場合は、お客様にお知らせする。それはしっかりやっていいます。
NTTドコモグループに入った
『らでぃっしゅぼーや』は、1988年に市民団体を母体に誕生しました。順調に売り上げを伸ばしていきました。2009年以降は、人口の減少やライバルの出現によって売り上げは減っていきます。
2012年にNTTドコモに買収されます。国枝さんは、2年後に社長として任命されます。NTTのエンジニアだった国枝さんは、農業とは無縁の世界で生きていたんです。
社員の意識を知りたくて、様々な現場を回りました。そこで見たのは、不揃いの野菜や虫の付いた野菜などを箱詰めしていたんです。
社員の意識を変える
月に1度の会議では、お客さんからのクレームの電話を聞きます。日々の業務に、もう少し“顧客志向”の要素を取り入れてほしい!それが社長の願いです。
商品を仕分けるセンターでは、ひとつひとつを丁寧に仕分けるようになりました。国枝社長は、会社の体質から変えようとしました。
変化に対応できる柔軟性を持て
国枝さんは、NTTのエンジニアから野菜の宅配会社の社長になりました。環境の変化を乗り越えるために必要なことは?
時代はどんどん変わっていくから、業種が違っても耐えられるような柔軟性や変化への適応力を養うことが重要かなと思っております。
忙しいママを応援!10分で本格野菜料理
“らでぃっしゅぼーや”には、「10分野菜セット」があります。季節ごとに10種類の野菜セットを販売しています。フライパンで炒めるだけで作れるから簡単です。
野菜は切ってあり、お肉は味付けしてあります。“野菜の味をこわさない”ようということに気を付けています。忙しいママは助かりますね♪
「10分野菜セットは、商品部の“東海林園子”さんが忙しいママのために考えました。他の野菜と一緒に投入したときに同じように火が通るように野菜のサイズは決められています。
「10分野菜セット」は、開封して10分以内で仕上がるように計算されています。ほとんどが5分~6分で出来上がります。
日本のオーガニックの市場は少ない?
ヨーロッパや北米では、4~5兆円の市場があります。人口対比からすると日本の有機野菜の市場は1兆円なければおかしい!
現状は1500億くらいしかありません!
どうしてオーガニックへの関心が少ないのか?
それは、いろんな理由が考えられます。日本のような高温多湿の気候の中で有機野菜を作るのはコストが割高になってしまいます。
もうひとつは、業界としてまだまだPR不足なのではないかと思います。業界として、もっと有機野菜をPRしなくてはいけない!これが一番です。そうすれば日本の有機野菜市場もどんどん大きくなっていくのではないかと思っています。
ライバル2社と共同プラットホーム
“らでぃっしゅぼーや”にとってはライバルでもある「大地を守る会」と「オイシックス」の2社と共同で有機野菜の基準を統一する提案をします。
3社で有機野菜を通してのプラットホームを作ろうと考えたのです。
より消費者に分かりやすくして市場を広げていこうという考え方に2社とも賛成しました。もっと有機野菜が身近になる日も近いのかなと思いました。
村上龍 編集後記
「らでぃっしゅぼーや」の成果の象徴、それが「いと愛づらし名菜百選」ではないかと思う。地方・地域の希少な伝統的野菜を紹介し販売する。
生産そのものが困難になりつつある野菜をよみがえらせる、これは貴重な資源の再発見と維持につながる。
野菜は「生きもの」で、生産が止まると、その種は絶えてしまう。
国枝さんは元エンジニアだが、有機農法へ正当な敬意を抱き、その重要性を正確には把握している。
領域は違っても、優れた技術は、人々の幸福に貢献することを熟知しているからだろう。
有機を守る勇気・・・村上龍・・・
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