カンブリア宮殿|伊右衛門の1兆円ヒットを生んだ京都の老舗・福寿園は伝統と革新の二兎を追う

お取り寄せ

a0027_002459
京都の南にある宇治市は、日本屈指のお茶の伝統を持つお茶の産地です。「福寿園 宇治茶工房」では、本場の宇治抹茶を使った“かき氷”を食べることが出来ます。

ここでは、茶そばや玉露おにぎりなど、お茶を使ったメニューもたくさんあります。茶畑で収穫から加工まで、お茶作りの全ての体験が出来ます。

9月15日(木)の「カンブリア宮殿」では、『福寿園』の8代目社長の“福井正憲(ふくいまさのり)”さんが登場しました!

スポンサーリンク

 サントリーと福寿園のコラボ「伊右衛門」

コンビニの飲み物売り場で圧倒的な存在感がある“緑茶飲料”は、1990年に伊藤園が“お~いお茶”を発売したのが始まりです。

2004年には、サントリーが「伊右衛門」で殴り込みをかけました。京都の老舗と組むという、それまでにないペットボトル社が老舗ブームを巻き起こしました。

緑茶飲料の市場を大きく拡大させました。「伊右衛門」は、2055年には5240万ケースを生産しました。サントリーの扱う飲料ブランドのトップ3までに育ちました。

「伊右衛門」は、発売から10年たちます。累計売り上げは、1兆3000万円ほどになる予定です。その成功を支えたパートナーが『福寿園』です。

福寿園とは

『福寿園』は、京都の宇治にある木津川で“宇治茶”の伝統を受け継いできました。江戸時代の創業から226年、現在では年商121憶円を超える会社です。

契約農家から仕入れた茶葉を工場で加工します。自社ブランドで販売したり、原料として飲料メーカーに売っています。

伝統的な手もみ茶葉

職人が板を使って手もみで茶葉の加工をしている。雑味の原因となる成分をとるため板を使って4時間以上揉みます。渋みのない針のような茶葉が作られます。

福寿園では、伝統の技でこだわりのお茶を作っています。

「玉露」は、新芽が出るとすぐに覆いをかぶせます。日光を遮って光合成を抑え、渋みを減らしたお茶をいいます。

最先端のお茶工場でインスタントを作る

最新鋭のお茶工場もあります。ペットボトルの「伊右衛門」向けの茶葉の加工をして、サントリーに販売しています。インスタント用の商品の加工も行われています。

福寿園の歴史

『福寿園』は、1790年(寛政2年)に“福井伊右衛門”が創業しました。農家から買った茶葉を加工して小売りに卸す問屋でした。様々な挑戦の中でビジネスを拡大して来ました。

福井正巳(6代目)の挑戦!

福井さんの父親(6代目)の挑戦は、1952年(昭和27年)に京都駅で宇治茶の直売店を開くこと、問屋から小売りに打って出ました。

宇治茶と言うブランドがない時代に、自分たちが加工した茶葉を「宇治茶」というブランドで製造販売しました。

本当のおいしい宇治茶を、生粋の宇治茶を飲んでほしい。メーカーでちゃんとしたものを買ってほしい

作りたての鮮度を保つために構造でパック詰めして販売しました。この美味しさがヒットとなりました。

小売店が計って売るのが当たり前の時代に、工場でのパック詰めは革新的なサービスでした。

福井正憲(8代目)の挑戦!

福井さんが27歳の時に父親(6代目)が亡くなり、兄と一緒に経営をまかされました。

百貨店などに次々と出店すること、缶のお茶を作るなど革新的な商品作りも行なってきました。

京都・宇治はなぜ茶造りが盛んになったのか?

宇治は都の別荘地、藤原一族が別荘を持っていた。平等院もそう、お茶を使ってくれる価値を認めてくれる人がいた。

いくらいいものを作っても認めてくれる人がいなかったらダメです。内陸で寄ると昼の温度差が大きい、香りが良くなる。

1兆円ヒットの伊右衛門 誕生のドラマ

サントリー「伊右衛門」は、ペットボトルの緑茶飲料で累計1兆円の売り上げのありす。季節ごとにブレンドを変えるなど味へこだわりが長年の支持につながってきました。

伊右衛門の味の決め方

福寿園では、契約農家から買い付けた茶葉から「伊右衛門」用を選びます。重要なのは香りです。茶匠の“谷口良三”さんが味を決めます。

いろいろな香味の特徴のある茶葉をバランス良くブレンドし、1つの味わいにします。茶葉は火入れをする強さで味が変わってしまします。

火入れ時間を長くすると香ばしさは増すが爽やかさがなくなってしまう。火入れ時間の違う茶葉をブレンドして、“コレ”というモノを見つけます。

「伊右衛門」の味は、20種類以上の茶葉の味で作られています。

サントリーが惚れこんだ理由とは?

伝統の技と大量生産の設備、その両方を兼ね備えることこそがサントリーが『福寿園』に惚れこんだ理由です。

飲料の原料を囲うできる工場まで持った老舗は『福寿園』1社しかなかった老舗なのに飲料までビジネスを展開している稀有な存在だと思います。

パッケージのネーミングは「伊右衛門」

パッケージのネーミングは1つの案しかなかった。その案とは“創業者の名前で本気度アピール!「伊右衛門」”でした。

その案を見たときに福井さんは、すぐに答えを出すことが出来ませんでした。その理由とは?

私たちの先祖の名前を引っ張り出すのはおかしい!“僕の名前なら貸します”と“貸す”と言うと語弊があるが、先祖だから私個人のものじゃない、代々のものでもあるし一族のものでもある。

サントリーの提案を受けた理由とは?

過去の福寿園の歴史を調べてみた。みんな、その時代に合う、あるいは明日のためになることをやってきた。

だから伝統は次から次へと新しいことをする。すればこそ伝統も守れる。私は、8代目の当番だから、ちゃんと次に渡さないといけない!

創業者名なら変なものを作れない

他社と違う良い品質の原料を作ろうと加工技術を開発した。先祖に恥をかかさない、この名前を潰してはいけないという使命感。

だから今まで以上にやった、私の名前では手を抜いたかもしれない!

伝統と革新の考えに変化は?

明日のための伝統と革新の二兎を追う

伝統的な福寿園をより一般の方に分かりやすく、その伝統の方向性も出さないといけない!革新のブレーキをしめないだ、伝統にもスピードアップするエンジンをつけた。

 

 福寿園タワー

『福寿園』の京都本店には、お茶のラウンジやレストラン、茶器などの販売もしています。

地下1Fには、本物のお茶を味わえるラウンジがあります。10g1,000円という高級な茶葉を使ったお茶が飲めます。

3Fの「京の茶膳」は、お茶を使ったフレンチを出す専門店です。革新的なお茶の使われ方をしています。

5Fは、茶器を売るフロアです。そのほとんどがオリジナル茶器、ガラスで作られた抹茶椀や内側を白く塗った急須など珍しい商品が並んでいます。

私の価値観では、その湯のみで飲めばお茶がおいしく飲めるかが一番大事、これで飲んだら楽しいと思える物を置いている。

アイデアは海外視察で生まれる

福井さんは、海外での視察を50年間続けています。世界各地のお茶に関するビジネスや文化など見てきました。

工業化のノウハウや新しい飲み方など、視察旅行から様々なアイデアを得てきました。150回は超える視察旅行は、80歳を超えても続けられています。

モンゴルでは、遊牧民のお茶の飲み方を教えてもらいます。ラクダのミルクで煮出す“スーテー茶”は、ココでしか飲めないお茶です。

福寿園の利益の使い道とは

外国人に人気スポット 抹茶体験

『福寿園』の京都本店は、総工費15憶円をかけています。ビルの中でもお金をかけたのが茶室です。伝統的な茶室を京都市内から移築しました。

お茶文化を体験できるスポットとして外国人に人気があります。英語が出来るスタッフによって、お茶の伝統を教えてくれます。抹茶体験は2,700円です。

お茶の淹れ方講座

企業を対象に「お茶の淹れ方講座」を開いています。1回1時間でお湯の温度からお茶を注ぐ量まで、誰でも美味しくお茶を入れることが出来るようになります。

短時間でおいしいお茶を入れる方法として、水を茶葉に含ませてから熱いお湯を入れると渋みが軽減されると言います。

村上龍 編集後記

「伊右衛門」は、「福寿園」の創業者名だ。ペットボトル製造販売自体「冒険」だったが、商品名に創業者の名前を使うという提案には さすがに衝撃を受け、困惑もあったらしい。

しかしサントリーの誠意ある対応もあって、福寿園は決断した。断崖から飛び降りるような決断だったはずで、しかもその瞬間、身を切るような重圧が生まれた。

創業者名は絶対に汚してはならない、圧倒的においしいお茶を生み出す必要がある。その重圧こそが、伝統を守る変革の本質である。

変革は、身を切るような決断によってのみ、実現される。

変革、身を切るような決断・・・村上龍・・・

コメント