>>>星のや軽井沢
週刊ダイヤモンドの“日本のリゾート宿泊ランキング”では、ベスト10の中に星野リゾートのホテルが4つもランクインしている。星野リゾートの魅力とは?
カンブリア宮殿では、スタッフひとりひとりが女将のような接客をする星野リゾートの“星野吉路(ほしのよしはる)”さんが登場しました。
星野リゾートとは
星野リゾートは、高級リゾートの「星のや」・上質な温泉旅館「界(かい)」・西洋スタイルの「リゾナーレ」と3つのブランドを持っています。
星野リゾートが運営する宿泊施設は、今では全国に35ヵ所あります。週刊ダイヤモンドの“日本のリゾート宿泊ランキング”では、「星のや軽井沢」が堂々の1位を飾っています。
4位に「リゾナーレ熱海」、5位に「星のや竹富島」、9位に「リゾナーレ八ヶ岳」がランクイン!旅のプロのお墨付きなんです。
東京オフィスは銀座にあります。星野リゾート運営施設の取扱高は、2009年には254憶円だったが2015年には441憶円と大きく成長しました。
界 鬼怒川
日光・鬼怒川にできた大吊橋は、絶景の中に浮かんでいるような空間が大人気になっています。無料で入れる足湯や駅前では、“日光ゆば丼”を目当てに行列が出来ています。
鬼怒川温泉にある話題の日本旅館「界 鬼怒川」は、入り口から透明なエレベーターに乗って客室まで向かいます。
和風モダンな客室が48室あります。眺めのいい露天風呂もあります。夕食は鬼怒川の竜神伝説にちなんだ“竜神鍋”が登場します。
地元の食材に焼石を投入するというダイナミックな創作料理です。益子焼に盛り付けられた懐石料理を食べることが出来ます。宿泊料金は1泊3万円からです。
「界 鬼怒川」の客室稼働率は73%あります。旅館の全国平均稼働率は37%、驚異的な稼働率です。
星野リゾート トマム(北海道)
>>>星野リゾート リゾナーレトマム
星野さんは、これまで経営破綻をしてきた数々のリゾート地を再生してきました。「星野リゾート トマム」は、冬に集中していた客を夏も呼び込み蘇った施設です。
集客に使ったのは、早朝に見える“雲海”です。一望できる雲海テラスを作ると大人気になりました。これはスタッフの案を採用しました。
地元スタッフによる地域の魅力の再発見こそ星野流のキモです。
星野リゾート 青森屋
>>>星野リゾート 青森屋
「青森屋」は、2004年に経営破綻しました。星野さんの手によって、わずか5年で黒字化に成功しました。
自慢の露天風呂「浮湯(うきゆ)」は、池の中にぽっかりと浮いているような開放感があります。団体客がメインの旅館のため、客室は236室あります。
1泊2食付きで1人1万5,500円から泊まれます。夕食は青森らしさが詰まった郷土料理が登場します。スタッフの8割は地元の人です。
お客さんをポニーが出迎えます。夜には“ねぶた”を見ることが出来ます。“りんごガチャガチャ”は、りんごをカプセルに詰めてガチャガチャして取り出します。
スタッフの案を出しあう“青森屋 魅力会議”は、総支配人から接客スタッフまで20名が参加します。上下の立場を関係なく意見を言い合う、これも星野イズムです。
星のや東京
>>>星のや東京
東京のど真ん中に出来た「星のや東京」は、星野リゾート初の都市型旅館です。“おもてなし”の粋を詰め込んだ進化した日本旅館です。
宿泊者の4割が海外からの方です。入口で靴を脱ぎます。畳を敷いたエレベーターで客室まで行きます。
客室は全部で84室あります。海外からの客も快適に過ごせるようにソファーやベッドを置いた和の空間です。料金は1泊1室7万2000円です。(大人3名まで宿泊)
各フロアには、お茶の間ラウンジがあります。夜は日本酒が好きなだけ呑めて、朝はおにぎりとみそ汁の朝食が出ます。
17階の最上階には大浴場があります。2年前に1500m地下から掘り当てた“大手町温泉”に入ることが出来ます。
ライバルは世界の有名ホテル
「星のや東京」は、アジア太平洋地域でこの1年間で開業したホテルの最優秀賞を獲得しました。2010年にシンガポールの「マリーネベイ・サンズ」も受賞しました。
星野リゾートまたは日本旅館が日本を飛び出して海外に出ていく、それが私たちの夢でもあります。
そのためには、世界の投資家が評価をしてくれないと一歩も出られない!私たちは運営を担当する会社です。
ホテルを所有・投資する投資家が運営会社として指名してくれるかが大事なんです。
星野リゾートは、宿の土地や建物を所有せず運営に特化することで勢力を拡大してきました。「星のや東京」は、三菱地所が所有しています。
日本では所有者が運営するケースが多いが、海外では運営はエキスパートが行うのがスタンダードです。星野リゾートはこのスタイルをとっている。
「アジア・パシフィック・ホテル投資カンファレンス」は、全世界の投資家が香港に集まり10月に開催される3日間の会議です。
この1年間に開業したホテルの中から最も優秀なホテルに贈られる「Reggie Shiu Development of the Year」を受賞しました。
星野リゾート経営ビジョン
1991年から“リゾート運営の達人”という経営ビジョンを掲げていました。それを2年前に“ホスピタリティ・イノベーター”へと変更しました。
それは、20数年を経て競争相手が変わったことによるものです。外国の運営会社が日本に入ってきました。
ハイヤットやコンラッド、リッツ・カールトン、フォーシーズンズなど世界の大手企業が参入しました。
そこで戦うためには、彼らがやっていないことをしなければならない!“イノベーター”にならなければならない。
日本にしかないホスピタリティはあるのか?
世界のホテル業界は、お客の満足度や声をよく聞くようになった。その結果、お客の声を聞けば聞くほど、どのホテルも同じサービスになった。
不満はなくて素晴らしいホテルだけどみんな一緒に見える。そこを打破するには、お客様の声を聞いてサービスを考えるのではなく自分たちのこだわりをサービスにしていく。
この地域に来たら、これは食べてもらいたい。青森に来たらこの体験はしてもらいたい!沖縄に来たら、これだけはぜひ見て帰って欲しい!
顧客のニーズにない、私たち側のこだわり。悪い言い方をすると押し付けてでも提供していく、そういうサービスが“おもてなし”であり“日本的”である。
リスクを取っていかない限り日本のホテル会社が世界で評価されることはない!
星野リゾート成功の裏側
星野さんの実家は、1914年に軽井沢で創業した「星野温泉旅館」です。4代目の後継ぎとして育ち、アメリカの大学院で“ホテル経営学”を学びました。
アメリカから実家を継ぐために戻ります。名経営者である父親は、昔ながらのやり方にこだわります。そこに確執が生まれます。
仕入れのしがらみ
旅館で使う備品の仕入れ業者は、一族の関係者や友人で固められていました。しかも割高だったんです。
見積もりを取って安い業者に切り替えることを提案すると、反対されてしまいます。父親は急激な変革を拒みました。
父親を解任
同族社員と一般社員の給与体系を統一しましょう、同族を特別扱いしていたら優秀な人材が集まらなくなります。
これにも大反対されてしまします。
1991年の株主総会、同族社員が集まる中で社長の交代を提案しました。星野さんは、6割の支持を得て社長を解任しました。
同族企業のメリットとデメリットは
同族企業の良い点は長期視点です。5年後や10年後の利益どうなるだろう?次の世代にどうしたら安全に会社をバトンタッチできるか?長期視点で経営が出来ます。
同族企業の欠点があるとしたら、どうしても公私混同がある点です。そこをしっかりと分けていくことが大切です。
そうしないと企業としては伸びていけないし、働いている社員の納得も得られない!いい人材もなかなか定着してくれない。
経営者の仕事とは
1980年代までは、社員のやる気は社員一人一人が出さなきゃいけないものだった。やる気のない社員がいたときに悪いのは本人だった。
80年代以降の人材学やビジネススクールの新しい理論は、社員のやる気は経営者の責任になってきた。
経営者が社員のやる気を出す。マネジメントをしなければいけない!社員たちのモチベーションを上げてやる気を出して楽しく仕事をしてもらい、能力を100%発揮してもらう、これが経営者の仕事です。
大きな転換が10年20年で日本でも起こったと思う。
バリ島で新リゾート!星のやバリ
星のや初の海外進出は、インドネシア・バリ島です。2017年1月にオープンする「星のやバリ」は、5年越しの夢が叶います。
茅葺屋根の建物はバリの伝統建築です。全室が独立しているヴィラは30室あります。1泊1室7万円で宿泊できます。それぞれのヴィラには専用プールがあります。
プールは運河のようになっていて、他の部屋のプールと繋がっています。夕食は、和食とインドネシア料理をミックスした創作料理です。
ジャングルのような中に鳥かごのような施設を作りました。あるのは大きなソファだけ、非日常体験をする場所です。
大事な点は、日本の旅館と同じようにそこで働くバリ人たちのこだわりを出していくこと。
バリ人にとっての“おもてなし”を出していきたい!バリの人たちを労働力として雇っているのではない、サービスのクリエーターと思っている。
青森屋や鬼怒川と同じように、バリに来ているお客様にどんな島だと思って帰ってほしいか?こだわりを考える場所にしたい。
新リゾート王の野望!バリ島の次は〇〇
「日本旅館」がホテルカテゴリーの1つに位置づけられるかどうか?「おもてなしが素晴らしいから日本旅館に泊まろう」
このマーケットを世界でつくることができれば日本旅館が世界に出ていくチャンスはある。ぜひ私たちにチャンスをいただきたい!
星のやサンフランシスコ・ロンドン・パリ・ニューヨーク、こういう施設をつくっていくのが私たちの夢でもある。ぜひ実現したい!
進化する星のイズム 日本旅館を“RYOKAN”に
星のリゾートでは、人材をもとめるべく年に3回入社の機会を設けている。秋の入社式では、生クリームとチョコレートで作った大きなケーキが登場しました。
地球型に見立てたケーキには、“世界進出”と書かれています。新入社員に世界進出を宣言しました。日本の旅館が世界を代表する日も近いのかも知れませんね♪
村上龍 編集後記
「おもてなし」の心、流行語にもなったが、その定義は曖昧だ。親切心や優しい笑顔などは、他の国にもある。
日本独自の価値観を示すこと、星野さんの考えは明確だった。だが、それは簡単ではない。
日本独自の価値観を再発見し、その示し方を、相手の側に立って徹底して考える、それ以外に方法はない。
政府は、2020年の訪日外国人目標を4千万人に倍増させたが、そのためには、星野リゾートの「ホスピタリティ・イノベーター」という新しいビジョンを、社会的に共有することが必要なのではないだろうか。
「おもてなし」の創造・・・村上龍・・・
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